近代新聞テキスト化事業とは

【よくある質問とその回答】
 
G.対象とする新聞そのものの著作権や、紙面の中の小説、挿絵、短歌、俳句、川柳などの著作権や写真の肖像権などについて問題はないのでしょうか?
私どもでは過去の新聞そのもの、新聞の中の記事、あるいは記事中の著作者名の振られた著作物などについて、記事のテキスト化が他者の権利に触れないかの調査を行ないました。結果としては、少なくとも現時点で入力をおこなっている明治時代の記事に関しては、他者の権利を侵害するおそれはほぼ無いとの結論に到っています。現在も調査を継続中ですが、これまでに調査した結果を以下の(1)〜(5)に区分して示します。これらの権利は、いかなる目的に使用されるものであろうとも尊重されるべきものであると私どもは考えていますので、今後も引き続き調査を行なって、その結果を随時この欄に更新記載したいと思います。なお以下の調査は、著作権保護機関である社団法人著作権情報センター(CRIC)、社団法人コンピューターソフトウエア著作権協会(ACCS)への問合せの形で行われたものです。
(1) 新聞そのものの著作権(=編集著作権
団体名義の編集著作権は、公表後50年を経過すれば自由に利用できます。現時点(2005年12月末)を基準に考えれば、1955年(昭和30年)以前に発行された新聞の編集権はすべて著作権対象外となり、私どもの事業の対象となる新聞の最終発行年度が昭和16年であることから、全ての対照新聞についてこの編集著作権には抵触しないと考えられます。
(2) 新聞紙面原本(マイクロフィルムや磁気画像化された元の原紙)の所蔵者の権利
この種の所有者(機関)の権利(=所有権)については継続して調査中ですが、明確に規定は無いようです。権利関係が不透明な部分と言えますが、私どもとしては原紙の所蔵者、所蔵機関の了承を得ることを前提に新聞テキスト化の作業を進めることを原則とします。
(3) 紙面の中の署名入り論文、論説の著作権
署名入りである場合、編集著作権とは別に、当該者個人の著作権が発生しますが、著作権者の死後50年で権利は消滅することとされています。
明治末年(1912年)に記述された紙面上の署名入り論説、論文は、現実的には零歳の人が著作者となる事はありえないため、仮に20歳であったと類推して著作者の年齢を計算すると、現時点では113歳となります。従ってこれらの方々が今も長寿を保っている可能性はほぼあり得ないと考えられます。著作権情報センターの担当者のお話でも、少なくとも明治期に記述されたものに関しては、著作権に抵触する恐れは無いと判断してよいのではないかとのことでした。
ただし、可能性はゼロとは言えないため、現在日本での生存者最高齢を115歳とし、2006年から115を差し引いた1891年に15歳を加算し、1906年(明治39年)以降の記事中の署名論文、論説については念のため該当者の生存調査を行なう事とします。
(4) 紙面の中の小説、短歌、俳句、川柳などの著作物
著作者が明記されているこれらの著作物については、死後50年の著作権が認められています。従って私どもはこれらを上記(3)の署名入り論文、論説と同様の扱いとし、1906年(明治39年)以前については著作権に抵触しないと判断し、また同年以降の記事中の著作者名が記された著作物については、該当者の生存調査を行なう事とします。
新聞社の公募により投稿された俳句や和歌などは、実名ではなく俳号などのペンネーム(に類する名)が記載されている例が多いのですが、これらの中の一般に汎く知られているペンネームに関しては実名と同様に判断し、上記(3)と同様の基準を適用します。著作者のペンネームが無名の方で、実名を追いようがないケースは、全て無記名と見なし、権利は著作者個人には存せず、新聞社の編集著作権として存すると見なすしかないであろうと考えています。この場合、(1)で触れたように本事業で対象とする新聞5紙の編集著作権は既に喪失していますので、調査は行なわないとして良いと考えます。
(5) 紙面中の写真撮影者の著作権及び被写体人物の肖像権
以下の@、Aは著作権、肖像権について説明していますが、私どもの新聞記事テキスト化事業では、写真や挿絵、商標デザインなどのイメージについては画像として公開する訳ではありません。あくまでも文字で書かれた部分のみのテキスト化であり、当該記事に写真等の有無の表示のみを行うため、これら写真等の著作権や肖像権は本事業に抵触することはありえないと考えています。(@、Aは本来不要な記述ですが、参考として記します。)
@写真を撮影したカメラマンの著作権は当該カメラマンの死後50年まで著作権が保護されています。
A写真の被写体である人物の肖像権は、その人物に属しますが、死後50年経過すれば肖像権は消滅します。
(6) 新聞記事の複製権
本事業では、新聞紙面に使われている旧字体や変体仮名をJIS第一、第二水準の文字(漢字、ひらがな)に変換してテキスト化しています。また記事中の商品市況などの表に関しても、表の形でWEB上で表示させることは技術的に困難なため、やむを得ずこれを一定の規則で文章形式でテキスト化を行っています。そのほかにも、原紙上で文字が滲んで不明な箇所や破損箇所などに関しては、その部分の文字を>の記号で表示するなどの対応を行っています。このような処理は、ケースによっては新聞の複製権に抵触する可能性があります。しかし、この加工は、WEB上で文字表示する為にはやむを得ない処置(テキスト入力の段階では原文に忠実に旧体字などで日本語処理を行っても、WEB上ではJIS第一、第二水準以外の外字は一般的には表示ができません。)であり、著作権保護センターのお話では、これを行う以外に機能を果たすことができないのであれば、やむを得ない修正と考えられ、複製権に抵触すると考えなくても良いのではないかとの判断でした。
また複製権に関しては、以下のようにも考えることができます。
本事業で作成されるテキストデータは、新聞そのものを元あったと同じ体裁で「復刻複製」する試みではなく、あくまでも元となる新聞原紙(マイクロフィルム、磁気画像)の閲覧をより簡便・容易とするために、自由かつ精細な検索手段としての索引情報を作成しているのであると規定することができます。このように、全文を自由語で検索可能な索引の一種を作成するということであれば、新聞原紙そのものを複製復刻することには当たらず、従って本事業の実施は複製権を侵害することには当たらないと考えられます。
さらに付け加えれば、複製権そのものも新聞自体の編集著作権者たる新聞社に属するのであり、当該新聞社が現時点で存在せず、また新聞社の存在した最終年(昭和16年)から既に64年を経過し、権利そのものが喪失しているとも考えられます。



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